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COLUMN 13

少年院出院者が立ち上げたNPO法人「子どもの家」  

NPO法人子どもの家足立 理事 竹中 ゆきはる

 当法人の発起人の一人である一期目の理事長( 以下「初代理事長」という。)は、少年院出身者です。初代理事長は、平成2年に少年院を仮退院後、平成12年から電気工事業を営み、平成17年に、14歳の頃からお世話になって感謝している保護司の先生からの推薦もあって協力雇用主になり、さらに、平成21年には保護司にも委嘱されました。
 初代理事長は、親がいない、または何らかの事情があって親元に帰ることのできない少年院出院者や保護観察中の少年たちを引き受け、自立更生を支えてきましたが、協力雇用主として引き取れる子どもたちの数に限界を感じたことがきっかけで、平成23年にNPO法人を立ち上げ、自立準備ホームとして都外の保護観察所に登録しました。
「せめて寝るための温かい布団だけでも」との思いで住居支援を始め、それからは、初代理事長の妻と妻の母が、寮母として食事の提供などに奮闘してくれています。令和元年9月には、家庭裁判所の補導委託の受託も開始しました。
 また、かつて少年院で職業訓練を受けさせて頂いた感謝から、職業に関する教育等を大切にしており、NPO法人として、少年たちに労働安全衛生法の特別教育等を受講させているほか、協力雇用主としては、雇用を通じて電気の国家資格の取得をサポートし、3名が合格しています。
 当法人では、思想理念の一番目に「足立区と近隣地域の社会を明るくする会、団体を目指します」と掲げ、引き受けた少年たちと駅のごみゼロ運動を笑顔で行うことを通じ、地域への貢献を心がけています。
 さまざまな場所でいろいろな方に向けて講演させていただくこともあります。少年たちには「今、その暗闇を過去にしろ。『親が』『国が』と言うより、自分の姿勢を見せるのが大切なんじゃないか」と。支援者や大人の方々には「彼らの人生はどんなに淋しかったでしょう。どんなに切なかったでしょう。どんなに悲しかったでしょう。どんなに悔しかったでしょう。どんなに辛かったでしょう。」といったことを伝えています。
 かつて少年院に、ある少年を引き受けに行った際、「ここにいるのは、かわいそうな奴らなんだよ、でも自己責任なんだって言わないといけないんだよ。」と院長が言った言葉は今でも心に残っています。