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COLUMN 1

刑務所出所者等の就労支援における課題

株式会社小学館集英社プロダクション キャリアコンサルタント 田辺 準

 弊社は2007年より法務省との委託契約に基づき、全国5つの官民協働刑事施設で受刑者の矯正教育業務を行っています。 
 刑務所出所後の円滑な社会復帰と再犯防止のために重要な要素の一つと言われる就労。刑務所在所中の内定と就業後の職場定着を目指して、キャリアコンサルタントによる相談受付や、出所後の就労に必要な能力の付与を目的とした教育プログラム・職業訓練等の提供をしています。 
 私は以前、静岡刑務所で就労支援スタッフとして、受刑者のカウンセリングや、出所後の就労で困らないようにするための指導・支援を担当していました。3年間で約150名の受刑者と面談しましたが、求職する全ての受刑者に共通して、犯罪・非行の前歴を「開示するか」「開示しないか」という課題がありました。これは、刑務所や少年院等を出る人が就職活動を行う上で選ばなければならない2つの選択肢です(注1)。 
 開示して就職活動を行う場合、犯罪・非行の前歴等を理解して雇用してくれる民間事業主(=協力雇用主)や職親プロジェクト、ハローワークの刑務所出所者等総合的就労支援対策など、支援の輪は広がっているものの、やはり選択肢は狭まるものと思います。他方で、開示することで、「いつか前歴がバレてしまうかもしれない」という心理的負担が緩和される、職場から必要なサポートを受けられるなどのメリットもあります。 
 開示せずに就職活動を行う場合、一般の求職者と変わりなく広く仕事を探すことができるメリットがあります(注2)。ただし、開示しないということは、黙っている(秘密にしている)ということなので、就労が決まり就業後に前歴が発覚した場合、特に成人は、履歴書の賞罰欄に前科を記載しなかったことが不実記載として解雇されるといったリスクが生まれます。 
 このように、どちらにもメリット・デメリットがあり、どちらが良いとは一概には言えません。私は、このことを丁寧に説明した上で、「よく考えて、最後は自分で決めましょう」と、受刑者自身で意思決定してもらうことを大切にしてきました。 
 刑事施設内でできる支援と時間には限りがあります。本ガイドブックの読者である地域の支援者の皆さんには、本人と向き合える時間を多く持っていただき、どんな社会生活を希望しているのかを聴き、実現するにはどんな支援が必要なのかを伝え、その意思決定を尊重し、本人が納得して進んでいけるよう、社会復帰に向けた就職活動を応援していただきたいと思います。 
 「罪を憎んで人を憎まず」とも言います。たとえ罪を犯してしまった人でも、償って社会に戻ってきた後、スムーズにリスタートできる社会になればと願っています。

刑務所内での就労カウンセリング

(注1)本コラムでは、刑務所出所者及び少年院出院者について記載していますが、執行猶予となった人でその猶予期間が経過していない人や、家庭裁判所で保護観察処分となり保護観察中の少年などにも、就職活動にあたって同様の選択が求められます。
(注2)職業によっては、法律等で欠格事由が規定されているものもあります。前歴を開示した場合でも、この欠格事由が免除されるというわけではありませんので、職業は一般の求職者と比べて限定される可能性があります。