私は栃木県栃木市にて、鳶、土木工事や建造物の解体工事業などを行っている会社の代表取締役で協力雇用主です。7年前からは更生保護女性会の会員もしております。
弊社は、設立して10年目で従業員数は36名。そのうち前科前歴があるものは27名、元暴力団員も8名おります。応募者全員を採用するわけにはいきませんが、絶対にやり直すという覚悟のある人は出来るだけ採用するようにしています。
13歳の時に、激しい夫婦喧嘩の末、両親が離婚し家族がバラバラになったことから、孤独や寂しさから私は非行に走りました。女だけで結成された暴走族に入り、窃盗、傷害など悪いことをたくさんして20代のほとんどを女子刑務所で過ごしていましたが、ある時私の人生に転機が訪れました。妊娠・出産です。生まれて初めて自分がしてきたことを後悔し、「この子のために本気で変わらなければいけない」と強く思いました。私自身が「やり直し」そして「生き直し」の経験者なのです。
会社を設立して10年、昔の私と同じように、生まれ育つ過程で大きな壁にぶつかり、孤独や寂しさからその壁を乗り越えられずに苦しむ人達と沢山出会いました。協力雇用主は、従業員に対して就労継続に必要な技能や生活習慣を習得させるための指導や助言を行うことは勿論ですが、家庭の温かみを知らずに生まれ育ってきた彼らを日常的に支え叱咤激励しつつ、温かい食事に温かい母ちゃんの愛情を持って接することは、私にだからできることだと思っています。
安全と安心が何よりも優先される現場仕事においては、社員間のコミュニケーションと情報共有が非常に重要となります。そこで弊社では、お花見、海水浴などのイベントを行っています。これらは、従業員同士の距離を縮め、チームワークを強固にしてくれていると感じています。年齢問わず、全社員が自分の家族だと思って接するようになってからというもの、みんなが笑顔でいてくれるようになりました。私は今、36名の従業員という名の息子や娘達に囲まれてとても幸せで、協力雇用主になって本当に良かったと思っています。
当然全てがうまくいくわけもなく、失敗も沢山ありました。
就労意欲や更正意欲が乏しく、採用しても悪い仲間との縁が切れずに職場内外でまた犯罪に手を染めてしまう者、同僚とのトラブルをおこす者、金銭面で華やかに過ごしていた暴力団の世界に未練があり、また組員に戻ってしまう者もいました。彼らには必然的に厳しくせざるを得ず、対立関係になることも少なくありません。私は協力雇用主として失格なのではないか?と、自信をなくし不安に押しつぶれそうになった時もあります。
社員に対しての指導で迷ったときには、担当保護観察官などからご助言・ご指導を受けて励みにしています。また、農家を営んでいる保護司さんに「これからもみんなに美味しいご飯を作ってやってくれよ」と大量の野菜を差し入れして頂くこともあります。こうしたたくさんの人達の協力や支えがあるからこそ、私は協力雇用主を続けられているんだなぁと、日々感謝の気持ちを忘れず過ごしております。
私の目標は、就労意欲や能力が乏しい方向けの更正保護施設を立ち上げることです。どうしたらステップアップできるかを一緒に考えて、本人の強み、力、良いところを見つけ出し、アットホームな施設を作っていきたいと夢を想い描いています。
この文章を読んで下さった皆様が、一人でも多く協力雇用主の現状を知り、共助の意識を持っていただくことで、対象者に居場所を与え、彼らの生き直しにおける支援者の一員となって下さることを心から願っております。