「ここを出たらサポステに連絡して来いよ、一緒に仕事を探してやるから。」
少年鑑別所内で毎月1回、希望する少年たちに対して就労支援セミナーを行うようになってから10年以上。セミナー回数は120回を超え、これまで数百名の少年たちに出会ってきました。
若者サポートステーション(サポステ)は厚生労働省からNPO等が受託し、15歳から49歳までの無業の若者が無料で活用できる公的な若者就労支援事業で、これまで600万件以上の方が利用されています。現在は、東京都内に9か所、全国では177か所設置されている事業ですが、更生保護事業ではないので、矯正施設からの個人情報の受け渡しは一切なく、本人から連絡をしてもらわなければ、出会うことができません。実際、少年鑑別所に通い始めてから1年間は、少年たちから連絡をもらえることは一度もなく、何をどのように伝えたら少年たちの心に届くのか、試行錯誤の末、たどり着いた声かけの言葉が、冒頭の、一般的にはやや乱暴にも聞こえる言葉でした。
それまでは毎回、「よかったら連絡してもらえませんか?」と優しく伝えていました。しかし、結果が出ず、やさしさに加えて頼りがいを感じてもらえる声かけで伝えてみようとチャレンジしたところ、次々と少年たちから連絡が入るようになりました。
彼らが頼りがいのある大人を切実に求めていることがわかりましたが、出会ってみると、彼らが持つ困難性は高く、重層的かつ多様なため、就労支援としてはとても対応が難しいものがほとんどで、職員たちも不安な気持ちに苛まれていました。 そこで職員たちには、「一緒に考え続ける人になってください。」とお願いをしました。具体的には、最初に出会ったときに①わぁ、どうしよう、②でも一緒に考える、③できないこともある、その時はゴメンね、の3つを同時に伝えてください、ということです。少年に最初に関わる全ての人に対していつも同じようにお願いしています。なぜなら、我々が「できない」と思ってしまうと、彼らを自然に排除してしまい、その排除された少年たちの多くは、一見頼りになる(実は少年たちを犯罪等に利用しようとする)大人たちに吸い寄せられてしまう構造があることに気がついたからです。私たちはこの構造を変えなくてはいけません。
更生保護事業の中にいない私たちは、少年たちに出会うことも大変ですし、少年たちに就労支援を提供し続けることも大変です。でも、たくさんの困難を抱えた少年たちは、大人たちの継続的な助けを求めています。就労支援を提供し続けることは難しいかもしれませんが、「一緒に考え続ける人」となることで、少年たちの継続的な助けになることは可能です。