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COLUMN 4

ヒューマン・コメディの採用支援 〜『Chance!!』が繋ぐ刑務所と社会~

株式会社ヒューマン・コメディ 代表取締役 三宅 晶子

 当社は非行歴・犯罪歴のある方の採用支援と教育支援を目的とした会社です。受刑者等専用求人誌『Chance!!』を年4回発行、全国の少年院・刑務所・拘置所等に配布しているほか、刑務所内での講座や、出所者雇用についての理解を深めるための一般向けの講演などをおこなっております。 
 2018年3月に『Chance!!』を創刊する前に、出所者側からは次のような声を聞いていました。
 「刑務所内に求人票が貼ってあったが、見てもよくわからなかった」 「とある会社に採用されたが、実際に入社してみると超・ブラックで、最低賃金以下で働かされ、寮では狭い部屋に何人も押し込められ、嫌になって飛び出してしまい、お金が尽きて再犯してしまった」 「過去を隠して就職していたが、バレてクビになった」
 そこで『Chance!!』では、代表者のメッセージや写真を多く掲載し、採用後の生活をイメージしやすいようにしています。また、寮や社宅などの住居支援や、給料の日払制度などによる当座の生活費支援等、「最低限お願いしたい6つのこと」を承諾して頂いた企業に対し、私が代表者と直接お話しした上で、掲載の可否を決めさせて頂いています。
 一方、企業側からは次のような声を聞いていました。
 「採用しても8割〜9割が”飛ぶ”。本当に”やり直したい”と思っている人はいないのか」
 そこで応募者からは、刑務所・少年院等施設内での自分の行いや再犯しないための決意など、A4サイズ 4枚にわたる『Chance!!専用履歴書』を書いて頂きます。過去をさらけ出さなくてはならないため、「これを書くのに1週間かかった」という方もいます。それだけに応募者の覚悟の有無が如実に表れます。
 『Chance!!』により内定した百名以上の中には、突如行方不明となり、その際に会社のスマホなどを持ち逃げしたり、その後再犯したりする人もいますが、雇って頂いた恩義を感じて一生懸命頑張る人もいます。掲載企業は総じて「一般の人よりもよく働く」と、出所者雇用に価値を見出しています。

受刑者等専用求人誌『Chance!!』表紙

 定着率の高い会社は、とにかく話を聴く時間・環境をつくっています。ある社長は毎日夕食を作り、食事中に元気がない社員がいたら「後で話そうか」と声を掛けます。またある社長は、夜、定期的に寮を回り、悩みなどがないか一人ずつ話を聴きます。「困ったことがあったら相談して」では人は相談しません。孤独を感じさせないようにし、不平不満の芽をできるだけ早く摘み取ることがキモとなるのではないかと思います。
 当社にできることは、そうした会社と彼らを繋ぐ”きっかけ”をつくることだけです。本人が変わろうと思えば、人生は必ずやり直せる。失敗や間違いをゆるして受け入れることのできるやさしい社会を目指して、今後も活動を続けてまいります。